時代とともに変化するオフィス環境。働き方に求められる多様性。
企業価値を高めるために必要な仕組みや、社会課題となっているテーマにフォーカスし、ご紹介します。
2000年代に二十歳を迎えた「ミレニアル世代」が注目されるようになって久しいですが、米国では今、新たな世代が脚光を浴びています。1996年〜2010年頃に生まれた「ジェネレーションZ(Z世代)」です。銃規制を訴えて立ち上がったZ世代の高校生たちが、SNSを通じて連帯し、大規模行進を成功させたことで、米国社会に鮮烈な印象を与えました。
もともと米国では、1946年〜64年生まれは「ベビーブーム世代」、1965年〜80年生まれは「X世代」と分類されており、続く1981年〜95年生まれのミレニアル世代は「Y世代」という別名を持っています。その次世代にあたることから、新しい世代には"Z"の呼称が与えられました。ちなみに、Z世代に続く2011年以降生まれの層には、「α(アルファ)世代」という名前が付けられています。
Z世代はミレニアル世代と同様、デジタルツールに囲まれて育った "デジタルネイティブ” ですが、パソコンよりスマホに慣れ親しみ、SNSを主要なコミュニケーションツールとして使いこなしているという特徴があります。そのため、"ソーシャルネイティブ"とも呼ばれ、つながり、共感することを大切にしています。
このZ世代の第一陣である1996年生まれの人が、2019年には23歳となり、社会に出ることになります。ミレニアル世代にZ世代も加わり、デジタルネイティブがワーカーの主体となることで、オフィスのIT化が一層前進することは間違いありません。特にこれからは、スマートスピーカーやチャットボットなど、AI関連ツールの普及が見込まれます。加えて、YammerやSlackなど、SNSのような使い心地のコミュニケーションツールもますます存在感を高めていくことになるでしょう。
ベビーブーム世代 出生:1946〜64年 現在:72~54歳 |
日本では団塊世代(1947年~49年)と重なる。人口が多く、経済や文化など多方面に影響を与える存在。核家族、猛烈社員、専業主婦といった、戦後日本の仕事観、家族観を築いた。「頑張れば報われる」という価値観が強い。 |
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ジェネレーションX 出生:1965〜80年 現在:38~53歳 |
日本ではバブル世代(1965年~69年)と重なる。豊かな社会を背景に、ブランドを重視して活発にモノ消費をした世代。ただ、就職氷河期世代(1970年~84年)については、財布のひもは固く、プライベートより仕事に軸足を置く傾向がみられる。 |
ジェネレーションY(ミレニアル世代) 出生:1981~95年 現在:23~37歳 |
幼い時からインターネットに触れて育ったデジタルネイティブ世代であり、日本のゆとり世代(1987年~2004年)とも重なる。ワークライフバランスを重視し、フェスやイベントなどの体験を楽しむコト消費の傾向がみられる。 |
ジェネレーションZ 出生:1996年〜2010年 現在:8~22歳 |
スマホに親しみ、SNSを重要なコミュニケーションツールにしているため、つながり、共感し合うことに価値を置いている。米国ではアフリカ系大統領の誕生や、ジェンダー問題、移民問題に関する盛んな議論に触れてきたことから、反差別的で社会問題への関心も強い。 |
※各世代の出生時期については決まった定義はなく、文献によって数年前後する。
こうしたテクノロジーの進化やワーカーの価値観の変化によって、仕事の進め方やイノベーションの起こり方が大きく変わるといわれています。
『ライフシフト 100年時代の人生戦略』で著名なリンダ・グラットン氏は、2012年の著書『ワークシフト ─ 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>』において、Z世代が30代となる2025年の働き方を描いています。その頃には性別や国籍、世界観も異なる多様な個人・組織がつながり、協力し合うことでイノベーションを実現するようになる、と彼女は指摘しています。
このような共創(Co-Creation)の発想は、世界で多くの共感を呼んでいます。日本でも共創を生むためのオフィスづくりがさまざまな企業で進められています。例えば、部門や会社の枠を越えた交流を促進するコミュニケーションスペースを設置したり、知性・創造性を刺激するため工作室やライブラリーを導入したり、快適性や健康面に配慮して食堂機能や空調機能に気配りしたり、多方面からアプローチがなされています。
オフィス環境の変革は、優秀な人材を確保する点からも有効です。
アジアの若い世代を対象に行われたある調査では、仕事選びの際に重視する要件として、「会社の場所」や「オフィスデザイン」「フレキシブル/リモートワークの有無」など、オフィスに関連した項目が「給与」や「人間関係」と並んで上位に入る結果となりました。
優秀な若手を確保し、つながり、共感することが得意な彼ら彼女らの能力を最大限に引き出す。それはイノベーションや生産性向上を実現していくうえで不可欠な視点です。Z世代が社会に出ようとしている今こそ、オフィス環境について見直す絶好の機会といえるかもしれません。