WORK × PLACE
  1. WORK × PLACE
  2. WORK × PLACE トレンドトピック
  3. ワーク・エンゲージメント

ワークスタイルに関するトレンド紹介記事
[Archive]

時代とともに変化するオフィス環境。働き方に求められる多様性。
企業価値を高めるために必要な仕組みや、社会課題となっているテーマにフォーカスし、ご紹介します。

組織マネジメント

ワーク・エンゲージメント

ワーカーの"働きがい"を測る指標として注目される「ワーク・エンゲージメント」。この指標が高い人ほど組織の業績に貢献することが分かっており、多くの企業にとってワーク・エンゲージメントの向上は重要課題となっています。しかし、日本のエンゲージメントは主要国の中で最下位という調査結果も。今回は、エンゲージメントとオフィス環境の関係をひもときながら、"働きがいを生むオフィス"について考察します。

"働きがい"が、企業価値を高めるキーワードに。

ここ数年、労働力不足や技術革新などの環境変化を背景に「働き方改革」をはじめとするワーカーの生産性向上に関する取り組みが重要度を増しています。なかでも、ワーカーが心身ともに健康で仕事に集中できる環境づくりは、人材の健康管理を戦略的に実践する「健康経営」の推進に伴って、企業の関心を集めています。

健康経営のなかでも、健康診断の100%受診やメンタルヘルスケア、生活習慣の改善など、いわゆる心身の健康を維持・増進する基本的な活動に対して、一人ひとりの"働きがい"を高め、組織を活性化する「攻めの健康経営」が昨今注目されています。そして、この"働きがい"を客観的に評価するのが、仕事に関連するポジティブな心理状態を表す「ワーク・エンゲージメント」という指標です。この指標が高い人が多い企業ほど、生産性や収益性など企業活動の主要な指標も高いことが各種調査で分かっています。ワーク・エンゲージメントの向上が、将来的に企業価値に大きな影響を与えるのです。

エンゲージメント向上の鍵は、働きやすい環境づくり。

このワーク・エンゲージメントを高めるには、どうすればいいのでしょうか。研究によれば、「組織の資源」と「個人の資源」、二つの資源が鍵を握るといいます。組織の資源とは、仕事を自分である程度調整でき、「任せてもらっている」という実感にもつながるコントロール感や、上司・同僚からのサポートなど、外的な要因が当てはまります。もう一つの個人の資源は、ワーカーの内面的な要因を指し、「こうすればうまくいく」といった自己効力感や、危機を乗り越える力などが当てはまります。

これら二つの資源を充実させるには、権限委譲や教育制度の充実、組織の風土改革、社内コミュニケーションの活性化など、総合的な取り組みが必要です。そこにはオフィス改革も含まれます。実際、世界の主要国を対象に行われたある調査によると、オフィスに対する満足度とワーク・エンゲージメントは相関関係にあることが報告されています。さらに、同調査によると日本のエンゲージメントは17カ国中最下位、そして、職場環境への不満が最も強いのも日本、という結果が示されています。

日本がエンゲージメントもオフィス満足度も低い理由とは?

では、グローバルのオフィスと日本のオフィスには、どのような違いがあるのでしょうか。

同調査でオフィスのレイアウトについてたずねたところ、「オープンな執務スペース」という回答がグローバルではわずか23%だったのに対し、日本では78%と突出して多い結果となりました。また、オフィスの外で仕事をする頻度については「まったくない」という回答がグローバル55%、日本94%と、こちらも大きなギャップがみられました。

日本では集中しづらいオープンな執務スペースにワーカーが縛りつけられている状況が浮き彫りになった結果です。このようなオフィス満足度の低さは、個々人のパフォーマンスに直結することになります。集中しづらいオフィス環境であれば、「任せてもらっている」という感覚(組織の資源)も、「こうすればうまくいく」という感覚(個人の資源)も持ちづらいのが実態ではないでしょうか。

オフィス改革を通して生まれる、思わぬ副産物。

そんな中、国内でも旧態依然としたオフィス環境を改革しようという動きが加速しています。

特に増えているのが、日々の業務に応じて働く時間や場所を選択できるABW (Activity Based Working)という概念を取り入れたオフィスづくりです。通常の執務スペースに加え、集中ブースや少人数のミーティング席、ラウンジ席、さらには遠隔地で仕事ができるサテライトオフィスなどを採用し、シーンに応じて使い分けられるようにしています。

オフィスづくりにワーカーの意見を反映する動きもみられます。ある企業では、事務所移転に向けてプロジェクトを立ち上げ、全社から集まったプロジェクトメンバーがアイデアを出しながら、新しいオフィスをつくりあげていきました。企業がワーカーのニーズを把握できるだけでなく、ワーカーが企業から大切にされていることを実感し、自己肯定感が高まる効果もあります。さらに、タテヨコのコミュニケーションが活性化する副次的な効果も生まれたといいます。

オフィスは仕事のインフラであるため、その改革をすることで、あらゆる分野の課題が浮き彫りになったり、改善が進んだりする効果が期待できます。攻めの健康経営の第一歩として、エンゲージメント向上の観点からオフィス環境を見直してみてはいかがでしょうか。

編集後記 ~「IoTオフィス」でエンゲージメント測定! ~

企業価値を高める「ワーク・エンゲージメント」。オフィスとの関連性も含め、今後ますます重要なワードになりそうですね!

私たち東急不動産では、エンゲージメント向上を実現する方法のひとつとして「IoTオフィス」の可能性を探っています。2019年3月に竣工する「渋谷ソラスタ」は、ビーコンで社員の位置を把握してコミュニケーションの活性化を図ったり、扉センサーでトイレの利用状況を可視化して混雑を緩和したりするなど、IoTを活用したソフトサービスを積極的に採用。

さらに、IoTで収集した情報を活用する仕組みも検討中です。各部屋の使用頻度・使用人数の把握や、社員同士のコミュニケーションの定量化などの行動分析により、オフィス環境を改善し、エンゲージメント向上を促すような活用方法が期待されます。

従業員は今の仕事に"働きがい"を感じているのか?不満を持っているとしたらそれは何なのか?課題を常に把握し、対策を練ることができれば、企業は自らの価値を高め続けることができるのではないでしょうか。