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ワークスタイルに関するトレンド紹介記事
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時代とともに変化するオフィス環境。働き方に求められる多様性。
企業価値を高めるために必要な仕組みや、社会課題となっているテーマにフォーカスし、ご紹介します。

オフィス環境

パワーナップ

毎日続く睡眠不足で、業務効率の悪化や長時間労働を招き、睡眠時間がさらに削られる。そんな悪循環に陥っている人は珍しくないのでは?これを断ち切るのに有効なのが「パワーナップ」と呼ばれる、ほんの20分程度の「お昼寝」です。今回は、睡眠不足がもたらす深刻な影響に迫るとともに、健康経営や生産性向上の観点から広がりをみせるパワーナップについてご紹介します。

経済損失は15兆円にも。
"不眠大国"日本が抱える大きな痛手。

長時間労働に長時間通勤、最近ではスマートフォンの長時間利用などが原因で、日本では多くの人が睡眠不足に悩んでいます。その証拠に、OECD(経済開発協力機構)が加盟28カ国などを対象に行った調査で、日本は平均睡眠時間が1日7.4時間と、他国を大きく引き離して最下位となりました。また、厚生労働省が行った調査によると、40代に限れば、睡眠時間が6時間未満の人が50%以上にのぼるなど、厳しい実態が明らかになっています。

睡眠不足の状態が続き、体に悪影響が蓄積されることを「睡眠負債」といい、数年ほど前から高い関心が寄せられるようになっています。睡眠負債は、免疫力の低下や肥満・糖尿病・心臓病のリスク上昇など、健康面に大きな悪影響を及ぼし、集中力の低下も招くため、生産性の悪化はもちろん、職場によっては重大な事故につながる可能性もあります。世界的なシンクタンクが試算した結果、睡眠不足による日本の経済損失は約15兆円に達しました。

8時間分の睡眠と同等の効果が!
効率的な仮眠で集中力アップ。

睡眠負債によって、文字通り大きな負債を抱える日本。その救世主となるかもしれないのが「パワーナップ」です。1990年代に米国で生まれた言葉で、日中に短い睡眠を取ることを意味し、集中力向上などの効果を引き出すとされています。

パワーナップが普通の昼寝と異なるのは、20分程度の"仮眠"であるという点です。熟睡状態ではない浅い眠りのため、短い時間でもすっきりと目覚められます。短時間ながら効果は絶大で、8時間の睡眠と同じ程度に体力が回復するとされています。NASA(米国航空宇宙局)などが行っているパワーナップ関連の実験では、心臓病のリスクが40%近く減少した、注意力が54%も伸びた、といった結果が報告されており、健康面と生産性の双方に効果があることが証明されています。

パワーナップ専用マシンまで登場。
有名企業が続々と仮眠を推奨。

パワーナップの具体的な実践方法としては、座った状態を維持して寝るのが望ましいとされています。熟睡して目覚めが悪くなる可能性があるため、体を横にすることは厳禁です。時間は10~20分程度が最適とされており、最大でも30分で起きられるようアラームを設定しましょう。また最近では、パワーナップの質をさらに高める「カフェインナップ」という手法も、じわじわと広がりをみせています。入眠前にコーヒーなどのカフェインを摂取することで、よりすっきりとした目覚めになるといわれています。

睡眠不足かそうでないかを問わずパワーナップの効果を得られることもあり、オフィスに仮眠スペースを設置する企業が国内外で増えています。米国では、NIKEやP&G、Uberなど業種を問わないさまざまな企業が導入しています。なかでもGoogleは米国の本社にパワーナップ専用マシン「Energy Pod」を設置するなど、ワーカーの睡眠を重視していることで知られています。このマシンに入ると外の光と音が遮断され、パワーナップに最適の姿勢で仮眠できるのだとか。20分アラームも付いているため、寝過ごしもありません。日本ではGMOインターネットが東京にある本社に昼寝部屋「GMO Siesta」を設置しています。30台ほどある仮眠シートは毎日ほぼフル稼働しており、社内で好評を得ているそうです。

「昼寝=悪」の呪縛からの解放を。
まずは社内意識の改善から始めてみる。

睡眠不足のせいで生産性が低下し、業務時間が長くなる。そんな職場の悪循環を断ち切り、働き方改革を推進するのに、パワーナップの導入はうってつけといえそうです。まずは、オフィスでの昼寝を推奨するといった声かけ運動から始めてみてもいいかもしれません。ただし、昼寝を悪とする価値観が日本では根強く残っていることも事実です。パワーナップを本気で導入したいのであれば、その科学的な効果をしっかりと社内に浸透させ、昼寝に対する偏見を取り除くような工夫が不可欠でしょう。

また、ここ最近流行している早朝勤務の導入についても注意が必要です。早起きの得意・不得意は、生まれながらにして備わっている「クロノタイプ」という体内時計に左右されることが分かっています。そのため、早朝勤務で生産性が低下するワーカーもいるはずです。勤務時間の柔軟性を高め、朝型人間も夜型人間も効率的に働ける仕組みにすることも一手かもしれません。

睡眠は人が活動する上で欠かせない行為である一方、適切な睡眠時間や熟睡に必要な条件は人によってまちまちであるなど、繊細な一面を持ち合わせています。だからこそ、慎重なケアが必要です。会社としてワーカーの睡眠と真剣に向き合うことで、働き方改革や健康経営のさらなる推進につなげてみてはいかがでしょうか。

編集後記 ~ 効果的な「お昼寝」で午後の生産性アップへ ~

今回紹介した「パワーナップ」、いかがでしたでしょうか。

私も昼食後に早速15分の仮眠を実践したところ、午後イチの会議が辛くない!強烈な眠気に襲われてもおかしくない、静かな(率直にいうと…退屈な)会議なのに、内容がしっかり頭に入ってきて効果は抜群でした。

「とはいえ、気軽にパワーナップを試せる場所がオフィスにない!」という方も多いのが実状ですよね。そんな方におすすめなのがこちらの睡眠カフェ。

新スタイルの睡眠体験型カフェ
https://suimin-cafe.jp/

ネスカフェが運営していて、15分程度の短い睡眠の前にコーヒーを飲む仮眠スタイル「コーヒーナップ」を体験できます。仮眠前にコーヒーを飲むことにより、ちょうど起きる頃にカフェインでシャキッとし、その後のパフォーマンスに役立つといわれているそう。仮眠用のチェアも人間工学に基づいてデザインされているなど、質の高い睡眠をとるための設備が整っています。

試してみたいけれど、職場ではちょっと…という方。一度こちらでパワーナップの効果を実感し、職場に広めてみてはいかがでしょう。