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ワークスタイルに関するトレンド紹介記事
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時代とともに変化するオフィス環境。働き方に求められる多様性。
企業価値を高めるために必要な仕組みや、社会課題となっているテーマにフォーカスし、ご紹介します。

組織マネジメント

エンプロイー・エクスペリエンス

就職先として人気があり、離職率も低い"人材確保の勝ち組み企業"。その共通点を探ると、ワーカーの気持ちに寄り添う姿勢が挙げられます。なかでも注目したいのが、「エンプロイー・エクスペリエンス」という概念。従業員の"経験価値"を意味する言葉で、エンゲージメントに大きな効果を発揮するといわれています。なぜいまの時代に"経験価値"が求められるのか、また、その向上をめざすにはどうすればいいのか、オフィス改革を通じた取り組み事例も紹介しながら、考察します。

人材確保の新たな秘策!?
コト消費時代に求められること。

来年、再来年、そして10年先も、当たり前のように給料が上がり続けていた時代。ワーカーと企業は深い絆で結ばれ、一つの企業で"勤め上げる"ことが当たり前でした。しかし、右肩上がりの経済成長が終わり、企業が定期的な昇給・昇進を約束できなくなったいま、どうやって優秀な人材を確保し、つなぎとめておくのか、多くの企業が頭を悩ませています。そうしたなか、ヒントになりそうなのが"体験"というキーワードです。

いわゆるモノ消費からコト消費へ、世の中の価値観が大きく切り替わるなか、マーケティングの世界では、「カスタマー・エクスペリエンス」という概念を使って、顧客との関係を見直す動きが広がっています。あらゆる顧客接点を通じて、ワクワク感や心地よさといった、感情を揺さぶる"経験価値"を提供し、顧客との絆を深めようというものです。これを企業とワーカーの関係にあてはめ、生まれたのが「エンプロイー・エクスペリエンス」です。経営方針や人事施策、社内風土、職場環境など、人材に関連するすべての企業活動を通じて、成長の実感や居心地のよさといったポジティブな感情につながる良質な体験を提供し、企業とワーカーの絆、つまりエンゲージメントの向上につなげていこう、という考え方です。

Airbnb やサイボウズも!
エンゲージメント優等生はエクスペリエンス先進企業!

エンプロイー・エクスペリエンスを追求するのであれば、これまで各部署がばらばらに行ってきた人材関連の施策について、ワーカーを中心にして、総合的に設計し直す視点が大切です。民泊サービスのAirbnbでは、社内にその名も「エンプロイー・エクスペリエンス」部を設置。採用から、オフィスの設計、業務管理システムの開発、キャリア・学習支援、健康面のサポートまで、他社であれば複数の部署が担う役割を一手に引き受け、ワーカーが気持ちよく働けるようトータルプロデュースしています。そんなワーカー目線での施策が功を奏し、本国アメリカで働きたい職場1位に選ばれるなど、Airbnbは人気の就職先となっています。このほか、StarbucksやAdobe Systemsなども、エクスペリエンス先進企業として知られています。

日本では、グループウェアを手がけるサイボウズが、100人いたら100通りの働き方がある、といわれるほど多様な働き方を認めています。その分、人事評価の基準を明確にして、不公平感が出ないよう工夫しているほか、グループウェアの活用や社内イベントなどを推進することで、テレワークの普及によって、希薄になりがちな社内コミュニケーションを活性化させています。多様な働き方を推進するだけでなく、その影響が及ぶ人事評価やコミュニケーションといった分野にもしっかりと目配せする姿勢は、良質なエクスペリエンスにつながります。実際、サイボウズは一時28%もあった離職率を4%まで低下させるなど、エンゲージメントの向上に成功した企業としてメディアでも取り上げられています。

ジャーニーマップで"経験価値"を可視化!
多様な部署の連携が可能に。

エクスペリエンス向上を実現するには、マーケティングで使われているジャーニーマップを応用すると効果的です。ターゲットの心理的な変化を旅の地図のように、時系列で追っていくもので、具体的には入社、教育、定着など、退職までの重要なフェーズを並べ、その下にワーカーの期待することやエンゲージメントの状況、エクスペリエンス向上のためのアクションを書き出していきます。

例えば、30代の中途社員をターゲットに設定した場合、入社直後には自分のキャリアを活かして即戦力として活躍したい思っていても、慣れない環境から、本来の力を発揮できないといった状況が想定されます。そうした期待と現実のギャップを埋めるため、綿密な導入研修プログラムの提供や上司との定期的な1on1、先輩中途社員とのつながりづくりなど、多方面からのアプローチが考えられます。同様に、他のフェーズにも情報を落とし込んでいけば、ワーカーの"経験価値"が可視化できるようになり、多様な部署が連携して一貫性のある施策設計が可能になります。こうした「エンプロイー・ジャーニーマップ」を採用の段階から描いておけば、より精度の高いエクスペリエンス施策につながります。

オフィス改革は絶好のチャンス。
一方的な押し付けは禁物!!

エンプロイー・エクスペリエンスを高めるために、ワーカーが一日の大半を過ごすオフィス環境は重要な役割を果たします。とりわけ、オフィス移転やオフィス改革は、エクスペリエンス向上の大きなチャンスとなります。しかし、企業が一方的に環境を変えてしまうと、ネガティブに受け止められる可能性もあるため逆効果。大切なのはワーカーを巻き込むことです。例えば、前述のサイボウズでは、2015年のオフィス移転に向けて20名ほどのオフィス検討委員会を立ち上げました。委員会の議論は、グループウェアなどを通じて社内に公開。委員以外のワーカーからも積極的に意見を募るようにしたことで、オフィスに関する白熱した議論が行われたそうです。働く場を自分たちでつくりあげた経験は、ワーカーにとってかけがえのない"経験価値"になったのではないでしょうか。

従来、企業視点でワーカーのキャリア形成や働き方を管理する、カンパニー・センタード(企業中心)の人材戦略が主流でした。しかし最近は、企業がワーカーに寄り添い、自発的な気づきやキャリア形成に導くピープル・センタード(社員中心)の重要性が認識されるようになっています。エンプロイー・エクスペリエンスの視点から、働き方改革や健康経営も含めた自社の取り組みを見直すことが、ワーカーとの絆を深める重要な一歩となりそうです。

編集後記 ~ Hello Again, SHIBUYA ~

東急不動産は、2019年8月、4年間過ごした青山から、創業の地「渋谷」に本社を移転しました。

今回は「コミュニケーション」×「生産性向上」を移転のキーワードに掲げ、新本社をライブオフィス化。スタートアップによる最先端の技術を取り入れながら、さまざまな実証実験を行なうことで、従業員自ら新しい働き方を実践し、改善に取り組める仕組みを作っています。

移転プロジェクトを通じて得た経験、そしてこれからも「働く場」を自分たちで検証し、改善し続けていくことは弊社の従業員にとってかけがえのない"経験価値"になりうると感じています。

▼社長メッセージ「私たちは、創業の地「渋谷」に戻ります」▼
https://www.tokyu-land.co.jp/messages/index190808.html