1995年以降生まれの"Z世代"の影響力が加速しています。Z世代はデジタルやソーシャルが当たり前の世代。9割がスマホを持ち、環境や持続可能性に関心が高いといわれています。Z世代は世界の全人口の三分の一を占め、今、人類全体の平均年齢は30歳前後となり、地球はかつてないほど若者が溢れた惑星です。少子高齢化がすすむ日本ではイメージしにくいのですが……。
このZ世代とミレニアル世代を合わせると、世界人口の7割近くがインターネットやパソコンのある生活環境の中で育ってきたデジタルネイティブであり、かつての世代とコミュニケーション方法や価値観、労働観が異なるようになってきていました。そこにCOVID-19で世界全体のシフトが起こったのです。
社内でのコミュニケーション、取引先や消費者との関係、衛生管理の再認識のみならず、リモートワークによって、時間の使い方や思考方法そのものが変化を遂げてきています。今年の新入社員や新入生に至っては、リモートワーク環境でしか仕事や大学を知らない「リモートワークネイティブ」世代すら生まれています。もしかしたら、この「リモートワークネイティブ」世代に社会がどのように見えているのか、これまでの世代はもっと学ぶべきなのかもしれません。
ミレニアル世代の集中力持続時間は12秒、続くZ世代のそれは8秒といわれています。集中力はどんどん短くなっているのです。この世代は、短い集中力で瞬間的にポイントを抑え、情報の結節や全体像をとらえるホロニックな思考や、そこから生まれる創発的な思考を持っているといわれます。
Twitterは140字。TikTokで撮影できる動画の長さは最大15秒。YouTubeでは最初の数秒間でその動画を見るかどうかを判断し、広告がインサートされるまでの8分間でサマライズされた世界の一般教養を学ぶようになりました。
こういった情報環境はミレニアル世代が作り上げ、そこに適応したZ世代の思考が生まれました。さらに、Z世代を意識したマーケティングにより、社会全体へと広がっているのですが、これを後押ししているのがwithコロナ時代の環境といわれています。これまで1回あたり平均時間が約80分だった社内会議が、Zoom会議では約40分と半分の時間に。会議が短くなるとアジェンダの事前共有も進み、意思決定のスピードアップ、また多様な意見を集約するためのファシリテーション能力、ダイバーシティにおけるセンスや、仕組みも必要となりました。
ショートノーティスなコミュニケーションとミキシングされた情報環境へ、世界はシフトしてきています。そこでは、アジェンダの背景にあるつながりや多様性、それぞれのステークホルダーの意見を「モジュール化」して捉える思考が進んでいるともいわれるようになってきました。
モジュールとは「機能単位、交換可能な構成部分」という意味の英単語です。システムの一部を構成するひとまとまりの機能を持った部品で、システムや他の部品への接合部(インターフェース)の仕様が規格化・標準化されており、容易に追加や交換ができるようなもののことを意味します。IoTは、様々な商品のモジュール化によって生まれたと言っても過言ではないでしょう。
このモジュール化が、社会環境の変化により、「思考」の領域でも起きていると考えることができます。モジュール化のメリットは、「再利用性の高さ」と「組み合わせの柔軟性」にあります。イノベーション理論のシュンペーターによれば、イノベーションとは「新結合」、すなわち「組み合わせの柔軟性」にあります。多様性こそが、イノベーションの鍵です。
リモートワークによって移動時間もなくなり、切れ目なく会議が続くなか、思考がモジュール化し、システム思考で捉えていく。そしてその「つながり」をコミュニティのなかで捉えていく。そんな「ソーシャル」な価値観を持った世代が増えてきました。
Z世代は、デジタルネイティブであると同時に、ソーシャルネイティブであるといわれています。
SNSが基本となり、個人の意思と同様に、あるいはそれ以上にコミュニティを重視します。お金やキャリアの価値を認める一方で、それを目的としない思考・行動パターンを持っています。それは経済成長や年収、名声が目的だった高度成長期〜バブル世代とは明らかに異なる目的意識といえるでしょう。そしてコミュニティを重視するが故に、人との「つながり」のなかでソーシャルグッドなものを評価し、社会に対して良い影響を与えるサステナブルを常識とする世代ともいえます。
米コーン・コミュニケーションズがZ世代(13-19歳)の男女1,000人に対して行ったCSRに関する動向調査では、社会や環境問題に関心があると答えた若者は87%にのぼりました。この数字はミレニアル世代を上回り、年齢が若いほど社会・環境問題への関心が高いことが浮き彫りになりました。そのような価値観を身につけた人材(タレント)、または多様なタレントを結び付けて、システムアップする環境が企業には求められているわけです。
次回は具体的な事例などを紹介していきます。
京都芸術大学客員教授/放送作家/メディアプロデューサー/ワールドシフトネットワークジャパン代表理事/
アースデイ東京ファウンダー
1964年、静岡生まれ。環境・平和・アートをテーマにしたメディアの企画構成・プロデュースを行う。価値観の転換(パラダイムシフト)や、持続可能社会の実現(ワールドシフト)の発信者&アーティストとして活動は多岐に渡る。アースデイ東京などの環境保護アクションの立ち上げや、国連 地球サミット(RIO+20)など国際会議のNGO参加、SDGs、ピースデー(国際平和デー)などへの社会提言・メディア発信に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見と実践の経験を持つ。世界のエココミュニティを取材し、エコビレッジの共同体デザイン、地域通貨、共同体教育、パーマカルチャー(持続可能な農的文化)などの事例研究から、カルチュアルクリエイティブス(文化創造者)、先住民から学ぶディープエコロジーの思想まで、未来のデザインのための智恵を伝え、それぞれの地域や現場に生かす仕事をしている。メディアの企画構成としては「素敵な宇宙船地球号」(テレビ朝日)、「アースラジオ」(INTER FM)、「里山資本主義CAFE」(NHK World)、環境省「森里川海」映像など多数。YOUTUBE「テトラノオト」で持続可能性や創造性についての動画BLOGをほぼ毎日更新している。
HP: http://www.kanatamusic.com/tetra/
YOUTUBE:https://www.youtube.com/c/テトラノオト